「勝手に撮影される気持ち、これで少しはわかった?あ?』


『あいにくあんたのためじゃない』柚木麻子

第171回直木賞候補作は、長大な作品がなく、いずれも読みやすそうなので、5冊全部読んでみることにしました。
先に紹介して麻布競馬場さんもですが、この作品も短編連作ですので、電車の中など空き時間にちょこちょこと読めます。

SNS、コロナ。生きにくい時代をもがいている様々な立場の人たちを描いていますが、特に第1話、SNSの暴力で周囲を傷つけてきたラーメン評論家のお話は面白いです。裕木麻子さんらしい軽快なタッチ。スッとする結末です。他の作品は意外と複雑な、もやっと気持ちを残しつつ終わるものもあり、それがかえってリアルさを感じさせます。今までの作品と違った新たな印象を受けました。