「熊楠さんは、己を知りたいんとちゃう、己が、己のままに生きられる術を知りたいんじゃ」


『われは熊楠』岩井圭也

まさに天才にして奇人。博覧強記、いや博覧狂気とも言いたくなるような人格の熊楠は、周囲との軋轢が絶えません。せっかく手にした大英博物館での仕事も失い、帰国後も常に金銭には苦労するが、「この世の全てを知り、己を知る」ためにひたすら突き進みます。

「我にはとうとう、我が何者かわからんかった」

長年彼を支えていた弟や病を患った最愛の息子との関係まで断ち切ってまで得ようとしたものはなんだったのか。

人間南方熊楠の生々しい剥き出しの性を描いた本作。衝撃的でした。