新書は面白い②


『カーストとは何か』鈴木真弥 中公新書

カースト制度って言葉を知らない人はいないけど、その仕組みや、どうしてインドではこんなに根深い問題になっているのかなどはあまり理解されてないですよね。
読んで驚き!いまや人口は中国を抜き世界一、2040年にはドイツ、日本を抜き世界3位の経済大国になると言われているインドだけど、この現実を知ると本格的な発展はまだまだだろうなと思っちゃう。

まずカーストだけど、これは各カースト間の分業によって保たれる相互依存の関係と、ヒンドゥー教の価値観による身分関係が組み合わさっている。宗教的価値観が入ってるから厄介。インド政府はカースト制度の差別を禁じてるけけど、全然消えていないのはそのためだね。

大まかにはバラモン(司祭)を頂点に職種別4つの位があって、子供は基本的には親のカーストの仕事を継承。だけどそのどれにも属せない被差別階級ダリトに対する差別がいまだに酷すぎるのだ。
食事を一緒にできないのはもちろん、彼らの触ったものに直接触れることも忌み嫌われているので、例えばお店の人はダリトにお釣りを返す時には床に小銭を投げるんだと。まじか。

いまだに消えない差別の要因のひとつはインドの衛生環境の酷さ。それに付随する職業の彼らへの差別に繋がっている。もうひとつが前述した人口の8割近くを占めるヒンドゥー教の考え方。だからダリトの脱ヒンドゥー、仏教徒化がおこる。

新しい職種であるIT産業はカーストの範囲外だから、インド系はアメリカでも一大勢力。でも結局移民内でのカーストハラスメントがひどくなり、アップル、グーグル、フェイスブックなどでの被差別問題が表面化などなど。

当該国にとってはアンタッチャブルな世界。現地メディアも踏み込まないようなテーマを日本人が相当きっちり取材してレポート。それを1000円で読めてしまう。やっぱり新書は面白い。