新書は面白い③

『持続可能なメディア』下山進 朝日新書
先日、マンションの資源ごみの日に新聞を捨てにいったのだが、ゴミ収集所に新聞紙がほとんどなかった。
築35年。自分を含め新築当時から住んでいる住民が多く、購入当時は月に2回の資源ごみの日は紐に結ばれた新聞紙が積み上げられていたんだけど。いま代わりにたくさん詰まれているのはAmazonなど通販のダンボール。
それもそのはず。新聞はこの7年で合計700万部部数を落としてるそうだ。新聞を支えてきた高齢者が介護施設にはいったり、亡くなるのでもっと加速するらしい。
自分は広告会社時代新聞の仕事が多かった。いまでも読みきれないくせに2紙とってるくらい人一倍新聞には愛着があるほう。なので、タイトルのような本が出るとついつい気になり、すぐ購入しちゃう。
著者は「2050年のメディア』で、Yahoo! 、日経電子版、読売新聞を題材にニュースメディアの攻防を描いて話題になった下山進。
まずこの新書自体が、まさにこの本のタイトル通り「既存メディアの持続可能性の難しさ」をくぐり抜けて刊行に至っている。もともとサンデー毎日で連載していたが、週刊でなくなることで週刊朝日に移籍。その週刊朝日もほどなく休刊。AERAへとお引越し。
海外メディア、ダイヤモンドオンライン、ハルメク、北國新聞、地方ケーブルテレビ、石川県立図書館など、持続可能モデルへの転換を果たせている事例を丁寧に取材。それぞれがなぜ転換できているのか、その本質的なところがよくわかる内容。読みやすく、とても参考になる。
北國新聞と震災の話は、目頭熱くなるし、
米子のケーブルテレビ局の逞しさ。池井戸潤に小説化してほしいくらい。
ここでは詳しく書けないけど、既存メディアの惨憺たるデジタル施策現状も書かれている。従来の編集組織、記者に対する厳しい指摘も多いけど、それは同胞としての愛着ゆえ。
最後に著者が語る持続可能なメディアの5条件を備忘録としてメモ
① イノベーションのジレンマを破れるか ②技術革新を適切に受け入れているか③そこでしか読めないもの、見ることができないものを提供しているか④買収が可能で横の流動性があるか⑤孤立を恐れず
メディアだけでなく、どの産業にもあてはまることですね。