新書は面白い .13


『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』國分功一郎 講談社現代新書

以前、國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』を読んでとても面白かった。あれは哲学関連で初めて最後まで読み通せた本だったかも。はい、哲学書苦手です。すぐ結論を急いじゃうタチなもので。

でもあの國分さん、スピノザの第一人者による同著、これなら読めるだろうと購入。

おそらく、スピノザについて最もわかりやすく書かれた本。

彼の思想の経緯を、順を追って丁寧に解説してくれているので、簡潔ながらも哲学の本を読んだ充実感は味わえた。

原著『エチカ』からの引用文が随所に出てくるけど、やはり難解。定理とか公理など出てきて、とても原著を読み切るのは自分には困難だろう。この入門書に出会えてよかった。

スピノザはスペイン系ユダヤ人。迫害を逃れてポルトガル経由でオランダのユダヤ人コミュニティで暮らした。

彼は精神と身体の関係性について徹底的に考えた哲学者。物体の本質は物そのものではなく、その物体がその性質を維持し続けようとする力(コナトゥス)にあるという全く新しい概念を提唱。あらゆる生物が存在し続けよくなろうとする性向への解釈にもなる。

スピノザ哲学の独創性はいくつもあるけど、自分が興味深かったのは「汎神論」。神が無限な存在だと言うのなら、神には外部と内部はなく、この世の全てが神と繋がっている。全ては神の中にある。だから、神即自然。

この自然と神を同一視する考えは、先日読んだ『ふしぎなキリスト教』で説明されていた「神が万物を創り上げた」という、一神教における神と自然との主従関係を否定することになるね。

当然スピノザの思想は危険視され、ユダヤ教会から24歳の時に破門されてしまう。これはとても厳しいもので、友人、家族も一切彼と接触してはならない。それでも翻意することなく生涯独自の哲学を探究し続けた。

哲学者って、わかりにくいことを延々と考えている人たちってイメージが先行してしまうけど、時には生命や自分の立場を賭しても真理を追求する覚悟も必要。言ってみれば世の中の思考のOSを構築していくような役割を果たしているから大事なのだね。

話は変わるけれど、先日五反田ゲンロンカフェの講座に行ってきた。会場では73人もの若い人たちが、3時間ひとりも中座せず、真剣に議論を聴いていて、すごい熱気を感じた。最近、哲学に対する注目のされ方が違ってきているのを強く感じます。