新書は面白い.26


『過疎ビジネス』横山勲 集英社新書

「無視されるちっちゃい自治体がいいんですよ。誰も気にしない自治体」 「(地方議員は)雑魚だから。ぼくらのほうが勉強してるし、分かっているから。いうこと聞けっていうのが本音じゃないですか」「超絶いいマネーロンダリング」

この超傍若無人な問題発言の主は、企業版ふるさと納税の仕組みを悪用して福島県国見町から官民連携事業を請け負っていたワンテーブル社の創業社長島田昌幸。

この録音データが河北新報により公開されたため

代表を退任することになったが、スクープ報道がなかったら、さらに多くの過疎に悩む全国の地方自治体が食いものにされるところだった。

その仕組みは、こうだ。

企業版ふるさと納税は、寄付額の9割が法人税などから税額控除される。自治体に寄付をした企業のグループ会社がその寄付金を使った事業を受注すれば利益が還元されることになる。課税逃れだ。

自治体は寄付した企業名の公開義務がないため、あとは出来レースの公募によって入札させちゃえば誰にも気が付かれない。

国見町の場合は、DMMグループおよびそのグループ会社から4億3200万円を寄付を受ける。国見町は高規格救急車12台を購入して他の自治体にリースするいう、なんとも不可解な事業を展開。DMMのグループ会社ベルリング社が応札。

国見町は独自の消防署さえないのにですよ!

もちろん仕様書は、万が一にもトヨタや日産が採択されないよう、ベルリング社の救急車にしかないスペックの条件が根拠なくてんこ盛りされている。

ワンテーブルが作成に関与しているのは一目瞭然。

しかも、河北新報が調べたら、明らかに相場の倍の価格で納品されている。

なんとも酷い話だが、さらに酷いのはここからだ。

河北新報の報道以降の国見町役場は、説明から逃げまくる、関係書類を捨てまくる、メールも職員全員が一斉に削除(「サーバーの負担を軽くするため、

初回には普段から削除を推奨してます」だと)

なに聞かれても「忘れました」

あまりの非協力ぶりに第三者委員会も匙を投げる。

まったくもって『対馬の海に沈む』と同じ展開だね。自治体のコンプライアンスってどうなってるんだろう。完全なガバナンス不全。

地方自治総合研究所が全国1741市町村で行なった調査では、77.3%が地方総合戦略の策定を外部のコンサルタントに委託しているとのこと。

特に東京の大手コンサルに集中。目立つのは丸投げ的な依存。外部委託した主な理由のひとつが「国からの交付金があったため」

国見町のような事件性のある案件以外でも、かなり杜撰な使われ方がされている。

とあるコンサル曰く「ひどいところは全く内容のないコピペ使い回しの提案でコンサルフィーをふんだくってます」

東京一極集中解消や人口減少への対応は本来国の役割。地方自治体自助努力でなんとかなる話ではないのでは?

国もこの問題を当事者の自治体に金だけ払ってぶん投げちゃったから、もともと人的リソースがない自治体はコンサル会社に丸投げするしかなく、結局食いものにされているという構図。

コンサル栄えて国滅ぶ

なかなかショッキングな新書でした。