新書は面白い.19

『外国人集住団地』岡崎広樹 扶桑社新書 オーディブルで。
実は今年の2月まで1年間マンションの理事長を務めていた。40戸程度の小さなマンションだけど、長年住んでいるといろんな問題もあって、それなりに面倒だった。今回は外国籍の方にも理事に就任していただいた。任期が終わりほっとしている。
この新書の舞台は、川口市芝園団地。チャイナ団地と呼ばれ、住民の6割が外国籍!
さぞかしトラブルが続出しているだろうと期待して見に来る人は肩透かしを食うらしい。
ゴミの分別はきちんとしているし、騒音、違法駐輪もない、いたって普通の団地なのだ。
もちろん、最初は大変だったようで。
例えば10階からゴミの入った袋を投げる。ゴミの分別などは全く無視。若いファミリー層が多いので子供の跳ね回る音が天井に響き渡る。夜中でもマンションの戸の前での話し声がうるさいなど。
ところがそれをききつけたマスコミが、チャイナ団地のトラブルと、ことさら大袈裟にとりあげたために、なんと外部からの外国人排斥主義者が団地にやってきて、外国人は出て行けの張り紙、誹謗中傷など対立を煽るような嫌がらせをはじめた。一触即発の状況だったらしい。
でも筆者をはじめとした町会メンバーは、外国籍の住民を排斥するのではなく、ひとつひとつ日本でのマナー、習慣を彼らの母国語で説明していく。
また、交流会、学生ボランティアによる芝園架け橋プロジェクト、町会の祭りへの勧誘などの活動により、次第に住民間の繋がりが出来上がっていった。
その努力の結果、いまではほとんどトラブルなく共生が成立しているという。
著者曰く、彼らは守りたくないとか、嫌がらせしたいのではなく、単に自分たちの国の習慣通りやっているだけ。守らないとどんな不利益があるかも含めて話す。日本人なら当たり前のことと、説明の必要がないこともちゃんと話しておかないとダメ。たしかに回覧だって日本語じゃスルーだよね。
この新書では江戸川区のインド人団地、大和市のインドシナ人、ブラジル人が多い愛知県豊田市知立団地なども取材している。お国が変われば習慣も考え方も全然違うので、それぞれ大変さはあるけど、いろんな工夫で乗り越えているようだ。
もっとも時には問題もあって。例えば日韓ワールドカップ決勝戦。ブラジルvsドイツの時の豊田市知立団地は、ものすごい数のブラジル人が団地の周り集まり、車のボンネットの上ではねまわり、警察が出動する騒ぎだった。お国柄ですねー。
良くも悪くも、こういう問題はこれからどこの自治体でも関係ないでは済まされなくなるだろうから、この新書の実例はとても参考になると思う。