「頑張れ。頑張ろうな。この三年間何度も言われてそのたびにうるせいよと思った。縁故と同じくらい忌々しい言葉が、なぜか今、目に染みてたまらない」


『ツミデミック』一穂ミチ

直木賞候補作5冊目。最後に読むのはこれと決めてましたが、期待以上でした。

「ツミデミック」とは、「罪」と「パンデミック」を掛け合わせた著者の造語。短編6作全てが新型コロナ×犯罪をテーマとしています。

新型コロナをテーマにした今日的な作品ではありますが、この本は時代を経ても古びない力強さがあります。文章のうまさ、ストーリーの意外性、エンディングの見事さ。さすがとしか言いようがありませんが、

私は特に4番目の「特別縁故者」にやられました。1作目の「違う羽の鳥」も奇妙な読後感があっていいですよ。