新書は面白い 11.

『疲労とはなにか』近藤一博 講談社ブルーバックス
著者は、慢性疲労をもたらし鬱病となる原因物質を見つけ、初めて疲労を数値化することに成功した疲労医学博士。
この本を読み終わった(聴き終わった)あと、博士が情熱大陸につい最近出ていたことを知った。なんてタイムリー。ていうか、それほど最近話題になっている研究なんだな。
日本は疲労研究については欧米よりかなり進んでいるそうです。理由は、不名誉な話だけど働きすぎ。ストレス多き慢性疲労症候群先進国だから。
過労死は英語でもkaroshiと表記されるらしい。それに、誰でも毎日口にしている「お疲れ様」という言葉。これって、疲れることを美徳として労りあってるということ? 睡眠時間も世界ワースト1位だしね。日本は疲労大国。疲労の研究を進めざるを得ないわけだ。
博士が突き止めた鬱病の原因。それはヒトヘルペスウィルスhhv6のSITH-1遺伝子が脳内で炎症を起こすから。ヘルペスって、あの疲れた時に口内炎になるあれですね。そんなやつが犯人だったとは。
そして、鬱病になりやすさ、つまりSITH-1陽性にかかりやすさは、遺伝性が30%から50%。これは高血圧の遺伝率と同じくらいの割と高い確率。
ヒトヘルペスウィルスを活性化させてしまう原因は、やっぱり過労とストレス。頑張りすぎ禁物。
みんな勘違いしていること。疲労と疲労感は別物。
疲労感は疲労のアラート。それを物理的に抑制し続けていると、知らないうちに疲労が溜まり、突然の鬱発症、過労死になりかねない。
なので、栄養剤やスタミナ食品、ニンニク、焼肉とかで疲労感に蓋をして休むことを怠るのは実は危険。これらの食品は疲労を減少させることはない。うなぎ食べて「おー!これでスタミナついたから1週間バッチリ働けるぞ」は、とんだ勘違い野郎だったのか、自分。
疲労を減少させる成分を含む食材は玉ねぎ、にんじん、マス、鰹、鶏の胸肉など。意外と地味なものでした。
また、過度の仕事のやりがい、万能感、疲れ知らずバリバリだぜー!な人。これも興奮状態で脳内の疲労感にマスクをしている。無自覚なオーバーワークは突然死に。それがベンチャー社長型過労死と呼ばれるタイプ。
生理的疲労は慢性疲労症候群の原因にはならないので、適度な運動は、耐性を高めるためには効果的。
だけど運動しすぎは禁物。実はスポーツ選手に鬱病患者は多い。オーバートレーニング症候群。
そう言えばトライアスロンの世界でも「アイアンマンブルー」という言葉を聞いたことがある。
これはロングのトライアスロンに出た後、レース完走の興奮が収まってからしばらくすると何もしたくない、どよーんとした気持ちがしばらく続くことがあることを指す。確かに自分もアイアンマンレース出たあとに経験あるある。あれは極度の疲労がもたらしてたんだ。全身の対抗力もめちゃくちゃ落ちるし。そういえば必ず口内炎にもなってたな。
本文中は結構科学用語が多くて。
途中「お主は一体先程から何を言っているのだ?」とオーディブルに向かってつぶやいてたけど。でも話の筋はわかりやすいので、科学音痴この上ない自分でも疲労せずに最後まで聴けたぞ。ありがとうブルーバックス。
ゴールデンウィーク、まずはしっかり休まなきゃ。